多くの方には聞きなれない症状名、疾患名だと思います。
ただ、この症状で困られている方は大変多いのです。
どのような病気なのでしょうか?
身体症状症は患者さんの自覚症状に見合う身体的異常や検査結果がないにもかかわらず、痛みや吐き気、めまいや頭痛、体のしびれなど、様々な身体の不調症状が長い期間にわたって続く疾患です。症状は体のさまざまな場所に生じ、しばしば変化します。患者さんの中には、症状を身体的に説明する原因がないということが受け入れられず、医療機関を転々としてしまい、精神科受診に至るまでかなりの時間がかかってしまう方もいらっしゃいます。また、多くの患者さんは、そうした身体症状のために仕事、学校や家庭などにおける日常生活に支障が出ています。
症状
代表的な身体症状症
「身体症状症および関連症群」に分類される病気にもいくつかの種類があります。そのうち代表的なものを以下に示します。
身体症状症
痛みや胃腸症状などのさまざまな身体症状が続くが、適切な診察、検査を行っても身体的な病気や薬による影響としては十分に説明できない、という病状です。痛みが主なものを、従来は疼痛性(とうつうせい)障害と呼んでいました。
病気不安症
重い病気である、病気にかかりそうだという気持ちが非常に強くなる病状です。身体の病気は存在しないか、あるいは存在したとしてもごく軽度で、気持ちの状態と実際の身体的な状態とに大きなギャップが生じます。従来は心気症(しんきしょう)と呼ばれていました。最近では、うつ病や認知症など精神神経疾患にかかったのではないかと不安にかられて受診される方もいらっしゃいます。
変換性/転換性障害(機能性神経症状症)
力が入らない(脱力・麻痺)、筋肉の強い突っ張り、歩けない、などといった運動に関する症状や、皮膚の感覚がおかしい、見えない(一部しか見えない)、聞こえない(聞こえにくい)、といった感覚の症状が出ます。他にも全身の筋肉がけいれんするてんかん発作のような症状が出現したり、意識を失ったかのような症状を生じたりすることもあります。あるいは、声が出ない、のどの中に異物感があるという感覚もしばしばみられる症状です。
原因は何でしょうか?
心身の疲労や環境変化などのストレスが何らかの形で患者さんの症状の形成にかかわっているケースも多いですが、必ずしもストレスが原因とは言い切れませんし、実際に脳の中で何が生じているのかは明確にはわかっていません。
どのように診断するのでしょう?
患者さんの訴える身体症状を引き起こすような身体的な病気が存在しないことが診断の大前提となります。内科や整形外科など、患者さんが困っている症状を通常担当する科で検査を受けていただき、本当に症状の元となるような病気がないことを確認します。身体的な疾患がないことが確認できたにも関わらず、さまざまな身体症状が持続するとき初めて身体症状症と診断されます。
うつ病や不安症などほかの精神疾患が合併することがあります。
身体症状症では、患者さん自身は紛れもなくその身体症状による苦痛を感じており、詐病(さびょう)や仮病とは異なります。
治療
まず、心配するような身体的な問題はないということをきちんと理解、納得することが大切です。患者さんにとっては辛い症状なので、問題はないということを受け入れることに抵抗がある場合も稀ではありません。しかし、身体的な精査や、検査結果に基づかない治療を繰り返すことでは症状は改善しませんし、症状に苦しむ時間が長引いてしまいます。
症状の正体が分かり受け入れることが出来れば、それだけで、不安も苦痛も和らぎます。
症状が比較的軽いときには、なるべく普段通りの日常生活を送ることが大切です。
精神科的な治療としては、下記のような治療法があります。
薬物療法
抗うつ薬や抗不安薬の使用が有効な場合があります。痛みの症状が強い人には、しばしばセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と呼ばれるタイプの抗うつ薬が効果的な場合があります。
認知行動療法
症状が悪くなるきっかけや状況、受け止め方(認知の仕方)、逆に症状が良くなる行動、受け止め方を模索し、症状が軽くなるよう行動の変容を促していきます。特に身体の感覚に意識を集中させてしまい、症状を悪循環させている方も多いので、その仕組みを医師と患者で共有することで、改善策を話し合っていきます。もちろん、現実に問題を抱えていらっしゃる方も多いので、その点については、いかに現実の困難を乗り切るのかを一緒に模索していくこととなります。これは、一般的な精神療法のアプローチとなります。
以上、身体症状症について解説してきましたが、様々な体調の不調が持続して、困られている方は当院までご相談下さい。
奈良こころとからだのクリニック
精神科・心療内科・内科
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