第7回 うつとアルコール使用関連障害

うつ病とアルコール依存症は高率に合併することが知られています。

うつ状態の辛さを和らげるために、アルコールは一時的に有効です。

しかしながら、その効果は酔っている間だけのものであり、日常生活におけるコンディションは改善させないどころか、悪化させます。

また、寝つけない、という事をきっかけに飲酒量が増加することも多いでしょうが、酔いが醒めてくると、反跳性の覚醒(深酔いが覚める過程で目が覚める状態)を起こします。

大規模研究で証明されていることですが、アルコール摂取により、脳は確実に委縮します。したがって、各種認知症のリスク要因になります。

また、海馬という記憶を最初に処理する脳部位はストレス性ホルモンやアルコールによって機能低下を起こします。通常、強い情動とセットの記憶(情動記憶)は長期に保存されますが、それでも、月日が経過すると、忘れはしなくても、思いだす度に当時のように、不安、恐怖、怒り、悲しみ、といったネガティブな感情の程度はおさまったり、引き起こされなくなります。これは、記憶の貯蔵場所が海馬から大脳皮質に移動するからです。

アルコールはこの転送を障害するので、情動記憶がいつまでも海馬に残ったままになります。よく、映画やドラマで、何年も前の辛い記憶について、酒場で泥酔しながら語っている場面が映されていますが、まさにそのような状態になってしまうのです。

繰り返しますが、アルコールを飲んで忘れられるのは、泥酔したその瞬間だけの記憶です。辛い情動記憶は忘れられるどころか、いつまでも残ってしまいます。

こうして、ストレスやトラウマが処理されず、うつ状態を悪化させていきます。

また、一時の楽さを求めて依存傾向が強まっていくのです。

当院では、まずは各患者様の病態(メカニズム)の把握を行い、「うつ」と「アルコール使用障害」の両方に対してバランスを見ながら治療を進めております。

奈良こころとからだのクリニック
精神科・心療内科・内科
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