第9回:強迫スペクトラム障害

スペクトラムというのは、広がりがある、連続性がある、関連がある、といった概念です。
「特定の事がらが気になって仕方ない」という症状があり、強迫性障害と併存する事が比較的多い症状群も、強迫スペクトラム障害として診断・治療が可能です。

現在、このグループに含められている症状をみていきましょう。
いずれも、その症状によって、日常生活や社会生活に何がしかの支障を来している事が診断条件となっています。また、心理的苦痛の程度はかなりばらつきがあり、本人は必要だと思い込んでいて、周囲の意見に耳を傾けない場合もあります。

① 醜形恐怖症/身体醜形障害
外見に重大な問題点があると思い込み(周囲は気にならない、些細だと思うような水準)、過剰な対応を行っている。

② 抜毛症:髪の毛や体毛を抜くことが止められない、気になって仕方ない。

③ 皮膚むしり症:皮膚(体や指先)をむしる、爪をむしることが止められない、気になって仕方ない。

④ ためこみ症:物を捨てる事、手放すことが困難で苦痛。生活空間を圧迫していたり、片付けが出来ない状況にあっても、物を捨てられない、手放せない。

いずれも、強迫性障害に準じた薬物療法および認知行動療法が有効です。
特に、対人恐怖やうつ症状も伴っているケースであれば、引きこもり状態に発展し、社会との接点が失われてしまいますので、重症化する前に診断および治療を行う事が大切です。

当院では、上記の4症状に悩まれている方が既に幾人も通院されております。
また、ためこみ症については、重度になると治療が困難なケースが多い事が知られていますが、最重症症例に対して治療が成功した私の経験について、世界的にも貴重な報告を行っています。(重度の溜め込み強迫症状を呈する強迫性障害患者への入院治療が奏功した1例.強迫性障害の研究(9) .星和書店、27-33. 2008.)

まずは、自分だけが悩んでいる訳ではなく、医学的にそういう症状がある事を知る事が大切です。それだけでも、不安感、恐怖心は和らげることができます。
また、自覚が乏しい方であっても、日常生活および社会生活において生じている支障に焦点を当てながら、治療を進めていくことは可能ですので、是非ともご相談ください。

奈良こころとからだのクリニック
精神科・心療内科・内科
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