第11回:ADHD(注意欠如・多動性障害)

本来であれば、生まれ持った特性(性質)であり、小学生時に気づかれるべきものです。ただし、2010年頃までは教育現場含めた一般層への理解が浸透していなかったこともあり、成長する過程で、より困難に遭遇して初めて気付かれるという事が稀ではありません。

ADHDの症状は①注意障害と②多動および衝動制御障害からなります。
このうち、多動(落ち着きがない、動き回るなど)は、成長と共に軽快していく事が多いです。衝動制御障害も、話を最後まで聞けない、割り込んでしまう、待ち時間を嫌がる、などからイライラしやすい、ケンカを良く起こしてしまうなど、程度には差異がありますが、概ね軽快していきます。
一方で、注意障害については、より強く残存する事が多いです。例えば、ケアレスミスを繰り返す、作業中に声掛けなどで中断されると注意がそれてしまい元の作業は放ったままになる、物をなくす、約束を忘れる、といった事で学校生活、社会生活に支障を来すようになります。小学生の間は、家庭でのサポートでカバーされていて問題化しない事もありますが、徐々に自立する過程でより注意障害が目立つことが多いです。高校生ぐらいまでは、授業も勉強内容も決められており、目の前に提示される事が多いた大きな支障なく過ごしていても、大学生以降ないし社会人となってから支障をきたすようになってくるケースも多くみられます。
また、スマホやネットへの過集中で生活リズムが狂いやすい、先延ばし癖、頻回の遅刻、といった随伴する症状も多くみられます。

治療について
これらの症状に対して、近年では薬物療法が確立されてきました。現在、成人では塩酸メチルフェニデート(商品名:コンサータ)とアトモキセチン塩酸塩(商品名:ストラテラ)の2剤が使用可能であり、小児ではさらに選択肢があります。すべての方に有効という訳ではありませんが、劇的に効果が出る方も稀ではありません。
一方で、ADHDの症状を理解して、対策を練る事、それらをルーティン化する事といった行動療法も大切です。この場合、あくまでADHDの症状は「やる気」でカバーできないという事を前提に、様々な工夫を担当医とともに試行錯誤していく事、行動変容を促す動機づけ等が重要となってきます。
なお、ADHDに諸症状に伴い叱責される事が続き、うつ状態・不安状態に陥り悪循環を来している方も受診される方には多く見受けられます。その場合は、先にうつ状態・不安状態に焦点を当てた治療を優先する場合もあります。
いずれにせよ、最終的な目標はADHDの症状を度コントロールし、よりポジティブに生活出来る事となってきます。

当院では、まずは面接による診断を行います。必要性が高いと判断した場合は、心理検査を行う事としております。もちろん、児童のADHDにも対応しております。

奈良こころとからだのクリニック
精神科・心療内科・内科
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