コラム第13回「うつ」について、再度

「うつ」は、精神科、心療内科を受診される一番多い理由、訴えになるのではないでしょうか。あらためて、うつについて、コラムで述べていきたいと思います。

そもそも、「うつ」と聞いて、思い浮かべるものは、皆様一人一人異なられることでしょう。職場、学校、家庭、人間関係、さらには自身や家族の健康問題などで思い悩むことは日常的です。現在のように、コロナウイルスによって、非日常的な状況を強いられていれば、それらもストレス要因になります。

ストレスが強まる、または一定期間持続すると、ストレスによる脳機能の低下が生じてきます。結果として、気分が落ち込む、意欲が出ない、十分に睡眠がとれない、食欲が出ない、妙な不安が出る、出口のない同じことばかり考えてしまい、気疲れしてしまう、中長期的にものごとが見れない、といった特徴的な症状が出てきます。

これらは、すべて「うつ」症状に該当します。

また、身体の不調を訴える方も多いでしょう。肩こり、頭痛、腰痛等の悪化、めまい・ふらつき、胃腸の具合が悪いなどなど、ストレス下では様々な身体症状が出ます。これらの身体症状を丁寧に診療していくと、実は「うつ」症状の治療が必要であるというケースは、稀ではありません。

では、「うつ症状」があれば、「うつ病」かというと、そういう訳ではありません。

まずは、「うつ症状」の程度です。

皆様の生活に支障をきたす程なのかどうか、どうか。

次に、その経過、症状が出ている期間が診断上、重要となってきます。

それらによって、正式な診断名が異なってはくるのですが、細かく診断カテゴリーを分類することに固執される必要性はないと思います。

さて、治療に際してですが、週単位で悪化傾向ないし2週間を超えて持続するようであれば、積極的な治療をお勧めしております。

辛い出来事やストレスを受けた場合、誰でも「うつ状態」になりますが、本来、人には時間経過とともに回復していく力があります。

ただし、回復をうながす要因、さまたげる要因は様々あり、「うつ状態」が持続する・悪化する、ということが週単位、月単位で続く場合は、早めの受診によって、より早い回復が得られます。早期発見、早期治療は、あらゆる医療の基本だからです。

当院では、しっかりとしたカウンセリングにより、「うつ症状」ないし「うつ状態」の要因を分析し、一緒に対応方法を検討することで、回復をサポートしております。また、必要性があると認めた場合は、抗うつ薬の投与も行います。抗うつ薬には依存性はありませんが、一方で安易に抗不安薬・睡眠薬を服用すると、耐性・依存性に悩まされる事になりかねませんので、適切な投薬治療が大切です。

なお、古典的精神医学の観点からすると、特に誘因なく(思い当たる節がなくとも)もしくは通常の反応を超えて発症してくるのが、本来のうつ病と位置づけていました。この場合は、適切な診断と治療が必須となります。

また、「うつ」症状は、「うつ病」以外のあらゆる精神疾患でも出現します。「うつ症状」は診断において特異度は極めて低く(特定の症状があれば、診断が決まるというものではない)、その「うつ症状」が何に由来するかを適切に診断していく必要があります。

  • 認知症の初期症状
  • 強迫性障害やパニック障害の結果として(二次的に)、「うつ」状態におちいる
  • 発達障害(自閉症スペクトラム障害、ADHD)における困難の結果としての「うつ」症状・「うつ」状態
  • 太るのが怖い、食べ吐きする、といった摂食障害の結果としての、「うつ状態」
  • 被害的になる、周囲におとしめられているような感じがする、などといった感覚が続くことの結果としての「うつ」

これらの場合でも、正確な診断と様々な症状が出ているメカニズムを分析し、本来的な精神疾患に対する治療を進めるだけでなく、「うつ症状」「うつ状態」の改善を支援します。

自分のしんどさは、治療が必要なものなのかどうかを見極める、というスタンスで当院を受診して頂ければ、きっと皆様のメンタルヘルスの向上にお役に立てることと思います。

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