周産期うつ

みなさん、周産期うつ、という言葉をご存知でしょうか。

産後うつ、は比較的知られるようになっているかと思います。

周産期とは出産を含む前後の期間を指す医学的用語です。

実は産後のみならず、妊娠中にもうつ状態になることは多いのです。

周産期うつ=妊娠中のうつ+産後うつ

とご理解していただければと思います。

さて、どの程度の確率で「周産期うつ」におちいるのでしょうか。

2020年に報告された論文では、日本における10万8千人における有病率は

妊娠中のうつ 14%

産後うつ:1ヵ月後 14%、6ヵ月後 11.5%、 12か月後 11.5%

と報告されています。

日本では年間100万人の出産数ですので(コロナ禍で減少中ですが)、周産期にある方は毎年200万人です。上記確率をあてはめると、毎年25万人以上の方が毎年周産期うつに悩まれている、苦しんでいる事になります。

そして、自分が周産期うつにおちいっている、自分のパートナーが周産期うつにおちいっていることにすら、気付いていないケースも多数あると思われます。

同論文から、図を改変して(日本語に翻訳)引用させて頂きます。

画像1

この図が示す事は、適切な対処をしないと、自然経過で周産期うつは改善しない、時間薬が効かない、ということです。

では、どのような対応が良いのか、これも、周産期うつに対する各種心理療法の有効性を統計的に比較検討した論文が既に出ています。

Sockolらによると、

①どの心理療法も、うつ症状を十分に改善する事
②また心理療法の回数も6~16回で効果を発揮している事
③個人心理療法(1対1)が良い事
④対人関係療法が特に有効であること

などが、統計的に示されています。

対人関係療法というと、難しく感じますが、周産期の女性は、身体的変化のみならず、仕事や家庭生活を始め、自分を取り巻く人間関係・環境の変化に適応する事がしばしば困難となります。そこに寄り添って、孤立を防ぐような心理的支援が有効であること、といえば、分かりやすいかと思います。

もちろん、うつ症状が強まれば、抗うつ薬の服用が必要となるケースもありますが(抗うつ薬の内服も妊娠中に安全に行えることから産婦人科学会のガイドラインからも必要な場合は勧める旨が記載されています)、心理療法を早い段階で行えれば、症状の悪化を防ぐ・改善差せれることが統計的にも証明されていますので、1人で抱え込まずに、適切なカウンセリングを受ける事が大切な事だと思います。

そして何より、本来新たな生命を生み育てるという大切なライフイベントに対してポジティブな状態で向き合っていただけることが、良い事には異論はないでしょう。

1人で悩まない事、そして誰にでも起こり得る事であるため、自分を責めない事、が最も大切なメッセージと考えます。

\